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2023.06.06

妊婦が猫を飼うと危険なのか?

「妊婦は猫を飼ってはいけない」

そんな情報を目にした経験はないでしょうか?

「妊娠したから飼っていた猫を泣く泣く譲った」

という話もあります。

ですが、トキソプラズマについて正しく理解できていれば、妊婦であっても猫と暮らせます。

今回は、妊婦とトキソプラズマ症について解説いたします。

そもそもトキソプラズマとは

トキソプラズマは、三日月形をした寄生性原生生物(原虫)です。

人や猫だけでなくほとんどの哺乳類、鳥類が感染すると言われ、人間の1/3以上がトキソプラズマに感染しているといわれています。

感染ルートは主に4つ。

・生肉
・動物の便
・トキソプラズマが含まれた土
・妊婦から胎児

生肉を食べたり、トキソプラズマが含まれた土を口にしてしまったり、動物の便に触れてしまったりした場合、妊婦から胎児へと感染します。

特に土の中のトキソプラズマは、数か月間感染力を持つため、注意が必要です。

妊婦から胎児へ感染するため、猫を怖がるケースが多いのですが、すでに感染している場合、胎児へうつる心配はありません。

トキソプラズマに注意が必要なのは、妊娠中にはじめてトキソプラズマに感染したケースのみ。

検査の結果、トキソプラズマの感染歴がない場合は、注意して生活を送りましょう。

人同士でもトキソプラズマはうつる?

ほとんどの哺乳類、鳥類がトキソプラズマに感染するのであれば、人間同士や飼っている犬や小動物にも注意が必要、という話になると思います。

ですが、猫以外の動物は、感染していてもトキソプラズマが筋肉内に潜むだけ。
生肉を食べなければ、感染の心配はありません。

ところが猫だけは、トキソプラズマの未成熟オーシストを便として排出します。

トキソプラズマの感染歴がない妊婦がこの便に触れてしまうと、胎児に先天的な障害がでる可能性があります。

また猫がオーシストを排出するのは、はじめて感染してから3週間程度です。

3週間以前にトキソプラズマ感染歴がある猫の場合は、これまで通り暮らせます。

トキソプラズマは、健康であれば猫の場合も人の場合も、ほとんど症状のない感染症です。
そのため、感染歴があるかどうか、自分では確認できません。

猫を飼っている場合は、自分や猫がトキソプラズマの抗体を持っているかどうか、妊娠前に検査しておくのがおすすめです。

妊婦さんは産婦人科で、猫は動物病院で検査できます。

自分も猫もトキソプラズマの感染歴がなかったら?

先ほども触れたとおり、トキソプラズマ感染するのは主に4ルートです。

・生肉
・動物の便
・トキソプラズマが含まれた土
・妊婦から胎児

自分も猫もトキソプラズマの感染歴がない場合は、

「妊娠中は生肉を食べない」
「土のついた野菜の購入を控える」
「ガーデニングなど土に触る作業はしない」
「猫のトイレ掃除は別の人にお願いする」

このような対処法で、感染を予防しましょう。

オーシストは排便から24時間程度で感染力を持ちます。
猫が便をしたら、速やかに掃除する習慣をつけましょう。

自分だけでなく、猫の感染対策も必要です。

室内で飼っていても、トキソプラズマにかかってしまう猫がいます。
生肉を食べさせない、土遊びをさせない、といった配慮で、人と猫の感染を防ぎましょう。

まとめ

胎児に感染してしまうと、先天性障害につながる恐れがあるトキソプラズマ。

出産を前に不安を抱えがちですが、注意するべきは、

・トキソプラズマ感染歴がない妊婦
・トキソプラズマ感染歴がない猫

です。

どちらかに感染歴がある場合は、うつる心配はありません。

妊娠=猫を手放す
という必要はありませんので、安心してください。

感染歴がなくても、日常生活に気を付けるだけで、猫との暮らしを継続できます。

分からないこと、心配なことがあれば獣医に相談しながら、猫と赤ちゃんが一緒に暮らせる環境を整えていきましょう。

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NEKOTO WATASHI

NEKOTO WATASHI
私たちは猫の様々な病気に向き合って来た獣医師です。これまでに仕入れた知識、これから学んでいくことを「猫とわたし」で発信し、愛猫家の皆様と愛猫ちゃんがいつまでも健康的で幸せでいられる社会をつくることが私たちのミッションとしています。

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