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2023.06.09

甲状腺機能亢進症

高齢の猫に多くみられる病気の一つに、甲状腺機能亢進症があります。

人と同じように、猫ののどにも甲状腺があり、甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる例を、甲状腺機能亢進症と呼びます。

甲状腺機能亢進症にかかると、どのような症状があらわれるのか。
兆候や治療法について、解説いたします。

甲状腺機能亢進症はどんな病気?

甲状腺機能亢進症にかかると、甲状腺ホルモンであるトリヨードサイロニン(T3)、サイロキシン(T4)が過剰に分泌されます。

甲状腺ホルモンは本来、身体の代謝をよくするために分泌されるホルモンです。
ですが、分泌が過剰になってしまった場合、身体への負担が大きくなってしまいます。

ホルモンの分泌が増えると食欲が増えるため、一時的に元気になったようにみえます。
そのため、つい見過ごしてしまいがちなのですが、症状が進行してしまうと食欲が落ち、心臓や呼吸器へ影響を与えてしまうでしょう。

たくさん食べているのに体重が増えない、痩せてしまうのも、甲状腺機能亢進症で多くみられる症状です。

すべての猫種でみられる疾患のため、シニア猫を飼っている場合は、甲状腺機能亢進症の兆候がないか、チェックしておきましょう。

甲状腺機能亢進症の兆候

猫が甲状腺機能亢進症にかかっている場合、このような様子がみられます。

・食欲が増える、もしくは低下する
・食欲が増えるのに体重が増えない、もしくは減る
・水を飲む量が増える
・尿量が増える
・嘔吐する
・下痢症状がでる
・元気になる、もしくは元気がなくなる
・攻撃的になる
・落ち着きがなくそわそわする
・瞳孔が開き、目がギラギラする
・毛がボサボサになる

かならずすべての症状が出るわけではなく、猫によってよく食べたり、元気を失くしたりなど、様子はさまざまです。

普段と違う兆候がみられたら、動物病院を受診しましょう。

甲状腺機能亢進症はどう治療する?

猫の甲状腺機能亢進症は、

・薬を飲む
・食事を見直す
・手術

これら3つの治療法が考えられます。
それぞれの方法を、くわしくみてみましょう。

薬を飲む

甲状腺ホルモンが過剰に作られないように、ホルモンの合成を阻害する薬を投薬します。
薬をやめると、再び甲状腺ホルモンの分泌が盛んになるため、生涯を通じて服用する必要があります。

猫によっては嘔吐や食欲不振、皮膚炎といった副作用が出る場合があるため、慎重に進めましょう。

食事を見直す

甲状腺ホルモンを作り出すもとはヨウ素です。ヨウ素を制限した療法食を与えることで、甲状腺ホルモンの分泌を抑制します。

投薬と同じく、止めてしまうと甲状腺ホルモンが作られてしまうため、一生の習慣となります。また療法食での治療を選ぶ場合、療法食以外のフード、おやつは一切禁止です。

療法食を嫌がる場合は、別の手段を検討しましょう。

手術

肥大した甲状腺を片側、もしくは両側摘出する手術です。術後は甲状腺がなくなるため、その後の治療はほとんど必要ありません。
(甲状腺ホルモンの不足により、投薬を受ける例が稀にあります)

シニア期に発症するケースが多いことから、年齢的に手術に耐えられるかどうか、リスクを検討の上判断します。

まとめ

甲状腺機能亢進症の原因はいろいろ知られていますが、具体的な予防法はまだ発見されていません。だからこそ、定期的な血液検査で甲状腺機能に異常がないか、たしかめるのが重要です。

症状が進んでしまうと、心肥大や呼吸困難といった重篤な事態になるケースもあります。

シニア期に入ると、その他病気を併発するケースもあるため、猫の状態に応じた適切な処置をお願いしましょう。

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NEKOTO WATASHI

NEKOTO WATASHI
私たちは猫の様々な病気に向き合って来た獣医師です。これまでに仕入れた知識、これから学んでいくことを「猫とわたし」で発信し、愛猫家の皆様と愛猫ちゃんがいつまでも健康的で幸せでいられる社会をつくることが私たちのミッションとしています。

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